のまネコ事件〜エイベックスが商標登録取り下げ

今月初旬より騒動に発展した「のまネコ事件」は、9/26に2ちゃんねる側による公開質問状の送付などで回答期限が定められ、これに対してエイベックスが以下のコメントで応じました。

■いわゆる「のまネコ」問題についての当グループの考え方
この度、私たちが販売しております「のまネコ」に関して、これまで皆様に混乱を招いたことを反省しつつ、「のまネコ」にかかわって今まで私たちがしてきたことをすべて見直しました。結論から言いますと、現在CDに特典としてつけているマイアヒ・フラッシュを今後はもうつけないことにしようと思います。また、「のまネコ」の図形商標の登録出願を有限会社ゼンに中止してもらおうと思います。こうすれば、多くの方々が共有財産として楽しんでいる「モナー」等について、私たちが何らかの権利を持っているかのような誤解を完全に払拭できると考えたからです。
私たちは、昨年10月に、「恋のマイアヒ」の楽曲を使ってアスキーアート文化の影響を受けた映像と共に音楽を楽しむ面白いフラッシュを見つけました。そのフラッシュは、使用許諾なく楽曲を使用していましたが、「これは非常に面白いので、是非皆さんにも楽しんでもらおう」と思い、作者の方に私たち用に改めてフラッシュを作ってもらい、もちろん作家の許諾を取った上で、CDの特典映像としました。それがマイアヒ・フラッシュの始まりだったことは皆様ご存知のとおりです。

しかし、その後CDの売れ行きが予想もしないぐらい伸びたことを背景に、私たちはビジネスとして、ぬいぐるみ等の「のまネコグッズ」をオリジナル商品として出すことにしました。その商品は、マイアヒ・フラッシュのイメージを残しつつ新たなオリジナリティを加えて別のキャラクターとして描き下ろされたものであり、もちろん「モナー」とは異なるものとして作っていただいたものですが、皆様には、「のまネコ」は上記のような経緯で誕生したマイアヒ・フラッシュと同様のものであると受け取られ、「のまネコ」によって「モナー」等のアスキーアートの自由な使用が制限されるのではないかといった様々なご不満・お叱りをいただきました。

私たちは、「のまネコ」は「モナー」とはまったく別物であり問題ないと考えていたからこそ、海賊版に対抗すること等を考えてごく普通に商標登録出願をしてもらったのですが、皆さんの気持ちの中では、「同じようなもの」というように捉えられたのだと思います。正直なところ、私たちは、別物ではあるものの、上記のとおりアスキーアート文化をバック・グラウンドとしてもつマイアヒ・フラッシュの知名度が「のまネコ」グッズ販売の一助になると考えておりました。

しかし、このことが原因で今回の混乱を招いた以上、直ちにマイアヒ・フラッシュの提供を中止し、「のまネコ」の図形商標の登録出願も取り下げることで、皆さんに安心していただこうと決心した次第です。
と、発表しようと思っていた矢先、本日未明、2ちゃんねるにエイベックス社員に対する殺人予告が載せられました。「のまネコ」問題が取りざたされるようになってから、今までも、一部の心ない方から嫌がらせまがいのことが私たち及び関係者に対して行われてきましたが、善意のファンや一般消費者の方々の声を真摯にうかがおうと思い、特段の措置はとりませんでした。しかし、今回のものは明らかに不法かつ著しく反社会的であって到底見過ごすことができるものではないので、警察に被害届けを出すことにしました。

この事件に接して、正直言って、冒頭からの発表文を出すことにややためらいを感じましたが皆様を信じて当初の予定通り発表させていただきます。

エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社 2005年9月30日

引用:エイベックス・グループ・ホールディングスのコメント(2005/9/30)


今回の事件が拡大した原因とは

  • エイベックスの立ち回りの不味さ

一番大きな原因は、企業の公式文にしては非常に稚拙としか言いようがない表現が多いことです。特に最初のコメント文で表現された「インスパイヤ」や「〜なんら制限するものではありません」などの消費者に誤解を与える言い回し、上記の文章においても、「〜マイアヒ・フラッシュを今後はもうつけないことにしようと思います。」など、まるで逆ギレしているような表現は何とかしたほうがいいと思います*1。正直言って、公式文の中に「正直言って〜」なんて表現を見たとき、さすがの私も吹きました。曲がりなりにも規模の大きい企業ですから、もう少し外向きの文章を作れる人が誰かは居るはずです。たったこれだけのことを気を付けるだけで、問題はかなり小規模に抑えられたでしょう。

  • 一般層への悪印象を惹起したこと

法的側面と倫理的側面の分析にエイベックス側も2ちゃんねる側も時間がかかったため、議論の焦点が定まらないまま感情的側面が強くネット上を駆けめぐり、表面的スローガンを受けた世論が反エイベックスに傾いたと思われます。



さてさて、まだ細かい部分でいろいろと続きそうですが、この事件は今日で峠を越えたとみてよさそうです。のまネコ事件自体は馬鹿馬鹿しいものですが、ネット上コンテンツの取り扱いに対する議論が大きな規模で行われたことは、法律関係者、コミュニティの大きな糧になるんじゃないでしょうか。



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*1:これだけ香ばしいと、ガイドライン板あたりでエイベックスのコメント文スレが立ちそうです。