現代の象形文字・アスキーアート

顔文字がなぜ使われ始めたかというと、古くはパソコン通信において、文字が主な伝達手段であるため、欠落する感情を「(^_^)」「(^_^;」といった表現が発達したと言われます。インターネット時代になると、さらにコミュニケーションの密度が上がり、従来文章と会話にあった一定の距離がさらに崩壊しました。そこで台頭してくるのが、顔文字をさらに複雑にしたAAというわけです。

さて、文字がかつて絵から発生したことは皆さんもご存じの通り。漢字の祖先である象形文字は、その物の形を象(かたど)って作った表意文字と分類されます。文字が絵から発生したときは複雑かつ芸術性を含んでいました。必然的に、そんな難しいの面倒くさい!と、歴史の中でどんどんと洗練・簡略化されてていきました。現代の中華人民共和国などは、漢字表現をごっそり簡易体にしてしまうなど、かなり乱暴なことをやっていますが、これもその流れの一つなんですね。

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一方、日本は中国から表意文字の漢字を輸入するまでは、音による会話体系を持っていたため、最終的には象形文字(漢字)+表音文字(平仮名・片仮名)という非常に表現の幅の広い言語「日本語」*1を作り上げました。中国とは異なり、日本人は「取り込み」「折衷」「融合」を行い、ある程度の洗練さを保持しつつ簡略化を避けて、表現の幅を広げることにご執心しているわけです。

では、情報化社会の先端である国内インターネットにおいて複雑なAAが多用されるのは何故か? 先ほど言いましたように、古代の象形文字は複雑故に「誰でも描けるものではない」というデメリットがあったわけです。だからどんどん簡略化していきました。今でも手書きで「薔薇」とか「憂鬱」とか書こうと思うと画数が多くて面倒臭いですよね。しかし、デジタル化社会が生み出した「自動漢字変換」「コピー&ペースト」によって、表意文字の複雑さはもはや問題では無くなりました。手書きの煩わしさから解放された文字は、かつて失った原点「表意」を取り戻そうと反動化し―その一つがAAだと思うのです*2



ちなみに、現役の象形文字として有名なのは中国雲南省・納西族のトンパ文字。この民族マジですごい。色まで意味付けに取り込んでます(笑)
http://kiriusa.cool.ne.jp/living/diary/f040809.html

*1:さらに近現代においては、西洋の表音文字であるアルファベットもパクりました。

*2:ただし、日本語という懐の広い言語がある以上、あくまでAAはオマケ以上にはなりません。きっちり会話をするならば、正しい日本語でコミュニケーションを取るほうが良いでしょう。