フォークロアって何?

「AA(アスキーアート)はネットコミュニティのフォークロアである」って言葉を聞いたのは「のまネコ事件」の中でなのですが、AA作っている私も初耳*1だったので、いったいどういうことなんだろう?と思って少し調べてみました。

そもそもこの発言をしたのはMUZOというFLASH系サイトの運営者の人なのですが、ここは定期的にFLASHイベントを開催しているところです。サイトの説明からみるとこんな組織。

有限会社パズブロック
│ …プロモート・ブロードバンドコンテンツ普及活動の運営会社。2005/04/11設立
│
└MUZO((人名じゃなくてサイト名ってことでいいのかな?)) …FLASHエンターテイメントサイト。FLASHイベントの開催元。
   │FLASH50氏…MUZOの代表     
   │
   └「flash★bomb」…FLASHのイベント

FLASH業界については疎いのですが、コンテンツクリエイターの人が多いこともあり、組織を作っていいものを作っていこうという熱い思いが伝わってきます。応援するぞー!って感じですね。

と話が逸れましたが、MUZO運営者のAAについての見解*2は以下のような内容です。

●なぜフォークロアなのか
今回の議論の中で、「AAはパブリックドメインだから」という話をされている方を見受けましたが、パブリックドメインとは、誰でも利用可能で、改変も自由ですし、誰でもそれを販売することができますし、改変も自由な、「著作権放棄、もしくは著作権が消滅したもの」を指す言葉です。つまりは、パブリックドメインなもの、ということは、どう扱われようとなんとも言えない、ということになります。

それを補完する概念として「コピーレフト」というものがあります。これは、改良・改変が加えられたものに関しても、改良前と同様の扱いを要求する、という考え方です。これらの考え方自体は、AAを考える上で非常に近い部分があるのですが、AAは、主に匿名掲示板で育まれてきたものですから、著作者が明確でない場合が殆どです。パブリックドメインコピーレフトの場合、元々の著作者は明確です。

前回、AAはネット上のフォークロアと考えている、と述べました。

これはまだあまり一般的でない概念ですが、もともと、伝承的、自然発生的に生まれてきたもの、(つまり、ほとんどの場合、著作者が不明であるが、あるコミュニティの中で語り継がれ、愛されている物語や意匠)という考え方であり、現在のAAが置かれている状況にとても近いと考えられます。扱いは、それを育んだ人たちのアイデンティティを侵害しない範囲でおこなうことが求められます。現在のAAの状況を考えると、この考えかたの方が適していると考えています。

引用:http://www.muzo.jp/ex/noma.html

フォーク(folk)という言葉は(1)民衆(2)民俗(3)親・家族・祖先―と言った意味合いで、身近なところではフォークソング(民謡)、フォークダンス(民俗舞踊)といった言葉がなじみ深いでしょう。その派生語として「民間伝承」という意味を持つフォークロア(folklore)があります。

なるほど、AAを民俗模様のようなものと捉えるのは面白い定義だと思いました。以前、アスキーアートのテレビ出演(その1) - アスキーアート・エッセイ(廃墟)の記事でCreative Commonsという考え方を教えていただきましたが、著作者が明確になっていない場合難しいという問題がありました。その点をクリアしているフォークロアという概念は、AAには相応しい考え方だと思います。まだ議論中らしいですが。

(3) WIPO・IGCにおける検討の背景
 フォークロアの議論は、伝承文化の保護・保存の観点と、それら既存の文化の自由な利用の観点の、双方のバランスを巡る議論であると共に、伝承文化の保護には民族の尊厳の保持という一面が強く存在している。例えば、著作権法の性格と目的からすれば、既に公有(パブリックドメイン)に帰した伝承の文化は、新たな文化創造のために「翻案」して利用するとしても、あるいは、商業的目的のために「複製」や「実演」などを行って利用するとしても、それらの利用については法的には何ら許諾を得る必要はない。
 しかし、コミュニティーにおいて伝承されてきた、コミュニティーにとって精神的価値の高い儀式や音楽が、商業的に利用されることにより、またコミュニティー内における利用形態を越えた「不適切」なアレンジをされて世に広められてしまうことにより、それらの伝承の価値が損なわれるのみならず民族の尊厳を傷つける結果となることの懸念等が指摘されている。また、コミュニティーにとっての秘密の儀式が、外部の人間によって「不適切」に公にされてしまうこと、高度な技術を必要とする伝承の手工芸が、外部の人間によって安く大量に生産されることにより、その伝統的価値が損なわれてしまうこと等の懸念も指摘されている。
 IGCにおける議論は、そのような伝承の文化表現を不正使用からどのように保護するのか、保護するとすれば、どのような保護の方法が適切なのか、知的財産として保護すべきか、あるいは文化財保護の観点から何らかの手段を講じるべきなのか、保護する対象をどう定義するのか、など広範に及んでいる。
引用:文化審議会 著作権分科会 国際小委員会中間報告書−3

ここで言われているポイントとして「コミュニティーの意向」を尊重するということがあります。じゃあAAのコミュニティーの意向って何なのかと言えば、現状でははっきり言って統一見解があるわけでもない*3です。2ちゃんねるにおけるAA専門掲示板でさえ、モナー系・顔文字系でかなり思想的ギャップがあったりします。さらに、現在2ちゃんねるがAA創作活動の大手であるとはいえ、フォークロア的に言えばモナー系AAの母体であるぁゃιぃわるーどなどの意向とかどうするの*4とか。もしAA専門掲示板で出来ることと言えば、このコミュニティの意向ってのをある程度統一するぐらいなのかも。


フォークロアの関係でちょっと興味を引いたのですが、ヨーロッパ全域では紋章、スコットランドではタータンチェックというファミリーシンボルがあります。それを管理する専門機関*5もあります。さすがヨーロッパはこういうところはしっかりしていて、言ってみればフォークロア管理団体になるのかな。日本においても家紋がありますが、管理する専門機関は聞いたこと無い*6ですけど。

AAについてはhttp://members.at.infoseek.co.jp/maruheso/aadic/が登録という意味で近い感じがしますが、それで権利を主張して何するの?と言われると、な〜んか落としどころというか、到達点がいまいち解らなかったりしますですよ。

*1:一般・ファッション用語としては知っていました。例としてアフリカの民族衣装とか音楽とか。

*2:ソースは消えているようです(´・ω・`)引用の引用ということで。

*3:厳密に言えば、現在活発に言われている多数派意見はAAコミュニティーの総意というより、VIPPERを中心とした外郭とも言えますし。

*4:うわー、ぁゃιぃと2ちゃんの意向が一致するなんて出来るわけねーw

*5:紋章を管理する紋章院は、中世時代から存在した。現在ではイギリスのみ。スコットランド紋章院ではタータンチェックも管理している。

*6:江戸時代においても他家の家紋を使わないなどの暗黙の了解は存在していたが、幕府自体は葵紋以外の使用はかなり寛容だったらしい。現在では個別に商標登録をして権利を保護しているケースがある。